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【J-Startup Hour 前編】2025年の崖を打開するSales Engagementとは?世界を目指すJ-Startup企業が提唱する最新営業術

令和も4年目に突入し、経済産業省が課題提起する2025年の崖まで3年。企業においては人事関連や会計・財務など、ITサービスの導入が一気に進み、デジタル変革が実現されつつあります。しかし一方で、企業の売上や成長を支える中枢の一つである営業組織においては、なかなか現場の活動が見えてこないことに起因するデジタル変革の遅れが指摘されています。
2023年には約6,300億円規模になると言われている“Sales Engagement”市場にいち早く切り込み、昨年J-Startup企業に選出されたUPWARDが、経産省の主催するプログラム「J-Startup Hour」に初参加。今こそ集中的に取り組むべき経営課題である営業DXの突破口について、DNX Ventures Managing Partner / Head of Japan 倉林 陽 氏を特別ゲストにお招きしたパネルディスカッションを開催しました。
更には経済産業省 新規事業創造推進室 室長 石井 芳明 氏が基調講演へ登壇。“日本の産業をもう一度元気に”をキーワードに、スタートアップに期待する役割やスタートアップ・エコシステムの今後の展望についてお伝えしています。

石井 芳明(経済産業省 新規事業創造推進室 室長)
経済産業省にてベンチャー政策、中小企業政策などに従事。LLC/LLP法制、日本ベンチャー大賞、始動Next Innovator、J-Startupなど、各種プログラムの創設を担当。青山学院大学大学院国際政治経済学研究科、早稲田大学大学院商学研究科修了。博士(商学)。2018年より内閣府でスタートアップ・エコシステム形成、オープンイノベーションの推進を担当。21年より現職。

倉林 陽(DNX Ventures Managing Partner / Head of Japan)
富士通株式会社及び三井物産株式会社にて日米でのベンチャーキャピタル業務を担当後、Globespan Capital Partners及びSalesforce Venturesの日本代表を歴任。2015年3月よりDNX Venturesに参画し、現在マネージングパートナー兼日本代表を務める。同志社大学博士(学術)、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営大学院修了。

金木 竜介(UPWARD株式会社 代表取締役社長 CEO)
1973年東京都生まれ。LBS(位置情報サービス:location-based service)やGIS(地理情報システム:Geographic Information System)に精通し、これまでに200以上のGIS関連システムを構築。国内初となるSalesforceと地図や位置情報を高度に連携させた、次世代型営業支援SaaS「UPWARD(アップワード)」を創業。現在、大手企業を中心に300社以上に導入されており、フィールドセールス向けのクラウドサービスとしては国内トップシェアを誇る。

目次

基調講演

【日本の産業をもう一度元気に】スタートアップ に期待する役割  

石井:2022年は、スタートアップ創出元年と言われています。スタートアップ支援についてはこれまでも行なってきましたが、更にそれを強化するということでこのキャッチフレーズが掲げられています。
今、内閣府として「新しい資本主義」という方向へ進むべきであるという議論があり、この中で「成長と分配の好循環」を実現したいとなったときに、“成長”を支えるのがスタートアップです。
開業
の準備から事業の立ち上げ人材育成指導、JETROの海外展開支援など、色々な政策を組み合わせて包括的なサポートを行なっています。その中の柱の一つとなるのが、我々の支援する「J-Startup」世界に価値を提供できる企業を増やしていく取り組みです。

石井:本日はUPWARD株式会社のセッションですが、J-Start-up第3次企業選定においても重点を置きたいエリアとして国の大きな課題であるDXの推進がありました。コロナ禍を経て、更に課題感が顕著になり進んでいる状況ではありますが、これを一段前に推し進めていくことが非常に重要です。
UPWARDのプロダクトを通じて営業組織働き方を変えていく、そして我が国のスタートアップが世界へ出ていって、価値を提供する。UPWARDもこの先海外展開をされると伺っていますので、そういった部分での活躍を非常に期待しております。

石井:この後金木社長、倉林さんからのお話がありますが、我が国のDXを、働き方を次のステージへ持っていってほしいな、と。最後に大切なメッセージですが、私たち政府はスタートアップを、積極的に支援しております。この先もどうぞよろしくお願いいたします。

2025年の崖を打開するSales Engagementとは?世界を目指すJ-Startup企業が提唱する最新営業術

金木:石井さんの基調講演でもありましたが、我々は「セールスエンゲージメント」という領域で、営業のDXならびにミッション「現場のラストワンマイルを革新する」の実現へ向けて世界を目指しています。本日はDNX Venturesの日本のトップである倉林さんと一緒に、ここを深掘りしていきたいと思います。

倉林:ありがとうございます。DNX VenturesというVC(ベンチャーキャピタル)で日本代表をしております、倉林と申します。今日、せっかくの機会なのでぜひお伝えしたいのですが、下記の資料の右側が、DNX Venturesで投資している企業の一部です。日本ではほとんどSaaS企業に投資をしており、我々ほど日本発SaaSの未来に掛けているファンドは他にないのでは、と思っております。

倉林:まず欧米に比べてこれまで日本はソフトウェア、デジタルが遅れており、BtoBスタートアップにおいて後進国でした。しかし資料の通り、ようやくBtoB分野の社会課題を解決する企業がいくつか出てきており、我々もフルベットで投資しています。 UPWARDとも長い付き合いで、かなり関係の近い投資先の1社です。
我々のファンドのイニシアティブとしては、シードから投資してオフィスをお貸しするなどのご支援をしながら、レイトステージになっても今度はグロースのファンドから投資する。BtoBスタートアップの、最初から最後までのステージを一貫して伴走する、という点です。

金木:倉林さん、ありがとうございます。
UPWARDについて、フィールドセールス向けのクラウドサービスとしては現在トップシェアを誇っています。セールスパーソンと顧客をつなぎ、企業全体の顧客への解像度を上げて戦略を立てやすくする“セールスエンゲージメント”を支援するシンプルなソリューションで、CRMと我々のサービスがシームレスに連携して、アプリケーションを何も触らなくても、自動顧客接点がお客様の情報に紐づいて入っていきます。

金木:蓄積されたデータを使って、位置情報を活用したロケーションインテリジェンスという領域で効率的に訪問計画も立てられ、リアルタイムにダッシュボード可視化されていく。こうしたセールスエンゲージメントを強力に支援していきたいなと考えております。日本ではまだこの概念自体があまり浸透していないので、セールスエンゲージメント自体を広めていくのも僕らの使命になります。

担い手不足の時代に営業組織はどう対応すべきか?

PDF18ページ

欧米で定着する、セールスエンゲージメントという考え方

倉林:セールスエンゲージメントという言葉自体、グローバルではCRMの次の世代、という位置付けですね。アメリカでは既にユニコーンなど非常に大きい会社が出てきていて、“主役”の位置付けになっています。日本ではまだCRMが主役ですが、3-4年後、必ず追ってセールスエンゲージメントも主役になるだろうと踏んでいます。UPWARDは随分前から先駆者としてこの領域をやっていたな、と、そんな印象です。

倉林:こうしたセールステックにおいてよくあるパターンとしては、まずはホリゾンタルSaaS(業界を問わず特定の業務に使われるSaaS)のセクターでセールスの自動化、効率化を図っていく。「全体の平均値を上げていく」というソリューションコンセプトはセールスエンゲージメント、セールスイネーブルメント、そのどちらにも共通しています。
属人的にパフォーマンスが変わってしまう
のではなく、テクノロジーを通じて「あなたは次このアクションしたらコンバージョンするよ」という示唆を与えることで、アクションを最適化していこう、と。あとは顧客のエンゲージメント、エキサイトメントを見ながら、最適なコミュニケーションを1対1でやっていくという、AIには叶えられない部分補完していく。
こうした一連の流れを、アメリカらしく自動化してテクノロジーの助けを借りながらやっていくという文化があるのですが、こうしたニーズは徐々に日本でも当てはまりつつあります。
終身雇用
が主流だった時代においては、ずっと新卒から同じ方がジェネラルに担当していくので、いわゆる“”を置かなくとも、上司から教わってその通りやることができました。しかし、日本企業であっても離職率が上がったり、中途採用が増えたり…。人の入れ替わりが昔よりどんどん進んでいる今では、営業の型が必要になってきています。

倉林:また、データで判断するということも重要です。先輩から「こう営業しろ!」と言われても、「本当にそのやり方は合っているか?」と疑問が出るように、営業手法が見直されるようになってきています。会社は変わらなくともお客様は変わるので、そこに昔ながらの「先輩の背中を見て勉強しろ」というスタイルがはたして適切なのか。こうしたところを可視化して、最適化する。こうした大きな流れが日本でも起きつつありますしし、市場として受け入れる素地ができてきているのかな、と感じます。

新型コロナウイルス感染拡大による日本市場の変化

金木:倉林さんからのお話にもありました通り、フィールドセールスの在り方が変わってきており、やはり少なからずコロナの影響もあるかな、と考えています。よりモバイル端末の活用が活発になり、実際に会社の拠点を頼らずに自分たちでお客様との接点を設けていく。
ただ業種・業界の中には、常にオンラインで商談をする商慣習がなかったり、そもそも営業対象であるお客様にITリテラシーがないという業種もたくさんある。電話もメールも繋がらず、訪問しなければ接点が持てないような…。そういった業界においても、「無暗に行く」ということは抑えられてきていますね。
実際に現場に行って、お会いしないとお客様の本質が掴めない
、というところがあるのではないかな、と考えていて。メールやオンライン会議だけではなく、電話でも話してみたり、お会いしたりしたときの空気感みたいなところ。担当者が受ける印象や、この商談ってこうなんだという…そんな、デジタライズできないような情報って、必ずあるのではないかと思います。

金木:営業DXとは2種類あると考えておりまして、一つはいわゆるオンライン名刺自動PDF解析サービスのような、元々紙だったり煩雑だった仕組みをデジタルで活用しやすくするもの。
もう一つは、人の頭の中手帳のメモといった、情報化されていない情報中堅の営業担当者の方が「自分が一番分かっている!」と思うような部分。ここのDXは、なかなか記録化しにくいところです。入力が個人任せになり、本人がサボってしまうことも多いところを、リアルタイム記録化していく。それらを定量化し、個別最適化された形で現場のインサイトへ返していくところに、我々は取り組んでいます。

対談記事の後編はこちら

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