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【J-Startup Hour 後編】2025年の崖を打開するSales Engagementとは?世界を目指すJ-Startup企業が提唱する最新営業術

令和も4年目に突入し、経済産業省が課題提起する2025年の崖まで3年。企業においては人事関連や会計・財務など、ITサービスの導入が一気に進み、デジタル変革が実現されつつあります。しかし一方で、企業の売上や成長を支える中枢の一つである営業組織においては、なかなか現場の活動が見えてこないことに起因するデジタル変革の遅れが指摘されています。

2023年には約6,300億円規模になると言われている“Sales Engagement”市場にいち早く切り込み、昨年J-Startup企業に選出されたUPWARDが、経産省の主催するプログラム「J-Startup Hour」に初参加。今こそ集中的に取り組むべき経営課題である営業DXの突破口について、DNX Ventures Managing Partner / Head of Japan 倉林 陽 氏を特別ゲストにお招きしたパネルディスカッションを開催しました。

対談記事の前編はこちら

倉林 陽(DNX Ventures Managing Partner / Head of Japan)
富士通株式会社及び三井物産株式会社にて日米でのベンチャーキャピタル業務を担当後、Globespan Capital Partners及びSalesforce Venturesの日本代表を歴任。2015年3月よりDNX Venturesに参画し、現在マネージングパートナー兼日本代表を務める。同志社大学博士(学術)、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営大学院修了。

金木 竜介(UPWARD株式会社 代表取締役社長 CEO)
1973年東京都生まれ。LBS(位置情報サービス:location-based service)やGIS(地理情報システム:Geographic Information System)に精通し、これまでに200以上のGIS関連システムを構築。国内初となるSalesforceと地図や位置情報を高度に連携させた、次世代型営業支援SaaS「UPWARD(アップワード)」を創業。現在、大手企業を中心に300社以上に導入されており、フィールドセールス向けのクラウドサービスとしては国内トップシェアを誇る。

目次

ホリゾンタルからバーティカルSaaS(※)への進化

※バーティカルSaaS(特定の業界に特化し、機能・サービスを提供するSaaS)

倉林:新しい分野のビジネスにおいて、ホリゾンタルSaaSで一定の市場ができたとき、特定業界の特定データを可視化して新たなインサイトを出そう、という動きが生まれます。特定業界のデータというのに特殊性があったり、他のホリゾンタルにないデータを保有していたり。
セールスエンゲージメント
において、アメリカには金融業界に特化したセールスエンゲージメントツールもあります。また、UPWARDに関しては日本の大手企業や製造業向けに、位置情報を活用して訪問した場所のデータなども自動で取り込むことによって、通常のCRMにはない新たなインプットとインサイトを出せるというような特徴があります。
セールスエンゲージメントに限らずCRMでも何でも、ホリゾンタルから “縦”に行く、バーティカルが出る流れはよくあるカタチです。
UPWARDはこうした流れの中で、セールスエンゲージメント市場の代表的な位置にいるのかな、と思います。

テクノロジーでセールスエンゲージメントを実現

金木:日本のお客様が抱えているのは、データエントリーデータコレクションに関する課題です。ありがちなのは、データを完全に入れているけど、全てテキストで入っている、というもの。それらをExcelでダウンロードして集計して成形して、スコアリングもそのシートをもとに手動で行なっていたり…。もちろん一部、自動化できているところもありますが、圧倒的に足りていないので、これらのデータコレクションを簡単にするというのが、我々のコンセプトです。
また、顧客接点のデータCRM情報と紐づくというのも大事です。データが紐づいて、地理的な可視化ができたり、現場でのインサイトを提供するというところが最重要で、この循環がまさにセールスエンゲージメントですし、テクノロジーの価値を発揮する部分かな、と考えています。  

テクノロジーの活用における日本と海外の違い

金木:日本が欧米と比べ、なぜ営業DXのハードルが高いのかというと、日本の方が営業現場の裁量が大きいという点があります。サラリーマンがセールスレップ(営業の専門職)として働いて、ある程度ノルマをこなして、日報を書く、みたいなところのコントロールが効いていない。書かないと怒られるものの、システムに入力する、しない、という部分が給料には反映されない、みたいなところがあるのではないかと。
アメリカは営業の代理店も多いと思いますが、個々人の活動についてはきちんと記録し、成果として報告しなさい、というCRMをベースにした考え方ですよね。

倉林:金木さんの仰る通り、リテラシーの低さ成果報酬が要因かなと。アメリカと比べると、やはりITリテラシーに課題がありますね。特にシニア世代になると、入社時の環境と全く異なるので、「自分がテクノロジーやデータを活用して競合や競争相手に勝ち抜くんだ」という文化がない。上司からも、データを活用するためのステップとして「データを入れていない人は成果が見えないから報酬を支払えないよ」というコミュニケーション仕組みによる強制力がない。
アメリカの場合はセールスレップがITを使いこなせないも何も、「使わないと自分の力を証明できないし、出し抜けない。相手にも勝てない。」というところに、違いがあるのかな。

金木:プロの営業、売ることに特化した人たちも、全体数としては少ないですよね。純粋に営業業務のみの人がいない、営業で売るという仕事の中に、保守サポートも含まれてしまう。

倉林:プロフェッショナルの考え方として、その役割に特化して突出している、売れる人材だから、次の会社にヘッドハントされて…みたいな文化がアメリカにはありますが、日本の場合はジェネラリストと表現されるような存在ですよね。決してどちらかが良い、悪いではないですが、使われ方に違いはあるのかなと思います。

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APAC市場でセールスエンゲージメントを支援する方法

金木:東南アジア営業のマネジメントサイドは往々にして、モニタリング要素を求めていると、お客様からよく伺います。実際に本当に現地へ行ったのかどうか、ミッションをこなしたかどうかをチェックしたい、と。日本だと非常に現場から嫌がられるソリューションの方向性ですが、特に地方に行けば行くほど、そこはあるのかな、と。
また、そもそもスマートフォンしか使わない。いくらPCでグラフィカルに見える世界があったとしても、スマホから見やすいアプリケーションじゃないと、誰も使いません。

倉林:アジアの場合、全くPCベースじゃないですね。モバイルファースト。あとはやはり日本ほどインフラが整っていないので、BtoBビジネスをしていく上では、決済発注処理などを訪問先で済ませる必要があります。アジアはアジアとして別のニーズがありますし、それをしっかり掴んでいくということが大事だと思いますが、インフラがないという点においては日本以上にエンゲージメントというのは絶対に必要ですね。
また特に難しいのはプライシングです。顧客当たりの単価が、どうしても低くなってしまうんですよね。SaaSアプリケーションだと価格は提供価値経済価値で置き換えられるので、 ARPA(Average Revenue Per Account:1アカウントあたりの平均売上金額を示す指標)が低いということは必然的にアプリケーションの価格も安くなってしまう。一方で、マーケットID数は非常に大きいなので、アジアに進出する場合には、ここをどのように乗り越えていくかがポイントですね。

金木:そうですね、僕らもそこは工夫しようと考えています。今まではなるべく現場目線シンプル国内のユーザーに向けて作ってきましたが、アジアにマーケットを広げると過大なところもあります。極限まで削って、開発や提供のコストを抑えていく。お客様のニーズに沿ってプランを分けて、必要な機能を取捨選択して選べるように、最適化したものを提供していきたいなと。

倉林:あとは、シンプルにめちゃくちゃお客様を獲得するしかないですね。ユーザーはかなりいるので、そこはやはり日本と違うところですね。

セールスエンゲージメントを成功に導くカギ

金木:これまで話してきたセールスエンゲージメント成功に導くためには、「セールスの再現性をどう作るか」が重要です。
一つのセールス領域
の中では、データエントリー、データコレクションなど、データ基準にしてやっていかなくてはいけないものの、そのデータがどうしても入らない。ただし、入れば新しい示唆を与えてくれますし、セールスのエンゲージメントが図れます。
この、データを入れるのが大変なんです。データを整備するのが難しいし煩雑なので、僕らが代わりにやります、というのがまさにUPWARDです。

あとは、個別最適化した営業のインサイトを与えてあげる。「あなたは、この業種のこの会社に行った方が良いよ」「今なら、以前も連絡して繋がった時間だから連絡取れるはず」といった示唆を与えてあげるだけで、パフォーマンスに伸び悩む人のレベルを引き上げられる。特に大企業、エンタープライズが抱えている悩みというのは、こういうボトムアップのところなんですよね。
DX
という言葉が単なるバズワードであった頃から、いよいよ「どうにかしないといけない」という状況に来ていると思います。ではどこに力点があるのかと言うと、データを“活用する”というところまで持っていかないと、DXではないと思います。
我々が目指すのは、一緒にデータが活用できるところまで持っていくテクノロジーを通じて伴走するというところなので、DXの本質を、ぜひ一緒に実現していきたいですね。2025年の崖まで残り時間も少ないですが、一歩一歩やれば一つ一つのイノベーション、改革は必ずできます。ぜひ、ご支援させてください。

本日はありがとうございました!

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