ビジネスでInsight(インサイト)を与えるGISの可能性に賭ける
20代後半で見つけた自分が本当に面白いと思うテクノロジーが、GIS(地理情報システム)というコンピューターサイエンスの一分野でした。特にWebとGISを掛け合わせると、リアルタイムでバーチャルな世界に地理空間が広がり、人々の間での「空間認識の共有」が簡単に実現できるすごい技術だと感じました。もっとビジネスで活かしたい、もっと社会のために使えないか、と試行錯誤を繰り返し、Salesforceというクラウド上にあるCRM(顧客関係性情報)と掛け合わせて、ビジネスに直感的にインサイト(気づき)を与えるサービス「UPWARD」が誕生しました。

2010年頃までのUPWARDは、今のようなSaaSを提供する会社ではなく、様々な位置情報に特化したWebシステムを受託開発するソフトハウスでした。そこで僕は「セールスコンサルタント」という、営業、コンサルティング、プロジェクトマネジメント、マーケティングなど、なんでもやる役割を担っていて、とにかくがむしゃらに働き、気付いたらCOO(Chief Operation Officer)という肩書になっていました。
そんな中、2012年にサンフランシスコで開催されたSalesforceが主催するDreamforceに参加し、「これからはSaaSだ!」という衝撃を受けました。イベント中、たまたま同じ飲食店で、当時Salesforceに入社したばかりの倉林さん(現DNX Ventures Managing Partner)と出会いました。その場で、倉林さんに「我々にも出資をしてください!」というようなことを伝えたような気がします。今やSaaS投資の第一人者である倉林さんからの出資をきっかけに、今の「UPWARD」の第一歩を踏むことができました。

UPWARDの前に立ちはだかった、大きな試練
当時はありがちな話でしたが、受託開発をしてきた会社が自社サービスの開発を同時並行で進めると、資金や人的リソースが枯渇してその多くはうまくいきません。当時の我々も同じで、初期の出資後、徐々に資金繰りが苦しくなって、余裕のない状態で新たな資金調達に駆け回ることになりました。当時は今のようなSaaSに投資するVC(ベンチャーキャピタル)も少なく、中々お金が集まらなかった。当時のCFOと苦しい資金繰りをなんとかやりくりし、それこそ必死に資金調達用のピッチ資料を何度も作り直しながら数十社のVCを回りました。全く相手にされず、唯一事業の可能性を評価してくれたのが、DNX VenturesとNVCC(日本ベンチャーキャピタル)で、この2社からの出資でなんとかUPWARDは事業を継続することができました。
