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【国土地理院 × 位置情報SaaS:Special対談 後編】地理空間情報で叶える、社会課題解決に向けた価値共創

SDGsやサステナビリティを戦略の基軸とする考え方がビジネスのスタンダードになりつつある今、どのようにソリューションをフィットさせながら、事業を進めていけば良いのでしょうか。

位置情報を通じてデータをプラットフォームに繋ぐアプリを提供するUPWARDは、2021年3月3日、「地理空間情報で叶える社会課題の解決」をテーマに国土地理院との対談を開催。

位置情報を活用したSaaSと、150年以上の歴史を持つ国家地図作成機関が生み出す共創価値のアイデアとは。

「Society5.0」時代へのビジネスフィットを目指す、すべての方に伝えたいメッセージを詰め込んでいます。ぜひご覧ください。

前編はこちら:【国土地理院 × 位置情報SaaS:Special対談 前編】地理空間情報で叶える、社会課題解決に向けた価値共創


国土地理院「地理院地図」×UPWARDで叶える日本のレジリエンス向上ビジョン

国土交通省国土地理院企画調査課長藤村

国土地理院地図を作り続けて150年以上の歴史がありますが、いままさに抱えている課題が、「地図を作る人と使う人のつながり」をどのように確保するかということです。国土地理院では日々正確な地図を作り、刊行していますが、「具体的にどうやって使ってもらうか」までは日々の業務で恒常的にはフォローできていません。

国土地理院は、街中にどんなお店があるといった情報は持っていません。でも、どこにどういう斜面があって、どういう災害リスクがあって、という情報は持っています。そういった基盤的地理空間情報のプロバイダーとして、「必要な時、必要としている人へ」着実に地図を提供していきたいのですが、それを実現する方法に悩んでいます。「地理院地図パートナーネットワーク」という、受託開発者とツール提供者と国土地理院との情報交換の場を立ち上げてはいるものの、国土地理院が伝えたいものユーザーが使いたいもののギャップを埋める方法が不足しており、少し苦しんでいます。

(国土地理院が提供実験を行なっている『地理院地図』では、国土地理院の保有する様々なデータをレイヤーで重ねて表現できる。)

国土交通省国土地理院企画調査課長藤村

SDGsアクションプラン2021に、国土交通省のミッションとして下記の項目が策定されています。

【地理空間情報によるパートナーシップの推進】

国連イニシアティブや国連専門家委員会、地方公共団体との連携や産学官連携を含む国内外のパートナーシップを通じて、防災など多分野での地理空間情報の利活用を推進する。

私自身、国土地理院の国際業務にも関わりつつ、国内では地方公共団体との連携を考える立場でもあります。SDGsを達成するためには国際協力国内実施一体で考えることが有効ですが、それらの共通目標を考えるには「海外の方にも伝わるようなシンプルなメッセージを考えてみる」という切り口で考えるとうまく行くように思っています。

アメリカでは、地理空間情報に関わる政府機関の多くは“命を守るため”の予算枠の中で活用できているように見受けました。私たちも、消防警察地方公共団体の最前線の現場担当者など、日本でオペレーションをやっている方々への地理空間情報を通じた支援を強化していくことはできないかと考えています。

UPWARD株式会社代表取締役社長CEO金木竜介

国土地理院という組織が、国民の命を守るための情報基盤として在るためには、地理院地図のデジタルデータを利活用するほかないかな、と僕は考えています。UI/UXの部分については、僕らのような民間企業に任せて、コンテンツプロバイダーとして情報をクラウドで使用しやすい形で提供する、という枠組みを推進してもらえれば、それだけでもグッと前に進むのではないでしょうか。

普段使いGoogle Mapsで、有事のときは地理院地図データに差し替えるなど、やはり、有事のときにパッと使ってもらえることが大事だと思うんです。今の時代、災害事故の情報は一般のメディアよりもSNSの方が速かったりします。インターネットやアプリケーションを使って繋がっていくというアプローチは必須です。

(2016年の熊本地震の際、熊本市長が連日Twitterを利用して市民への情報提供を行なった。内容は被災状況や避難所の案内、ボランティアの募集など幅広く、不安定な状況下での市民の安全確保に繋がり、有事の際にSNSを活用する動きは各所で広がっている。)

もちろんそういった有事の事態のためのBCPアプリというものもあるにはありますが、日常的に使っていないものを有事の際に急に使えるようになるかというと、そんなことはありません。実際、被災を受けた地域に物資としてノートパソコンを送っても、インフラが不備であったり、そもそもパソコンを立ち上げる暇もないから、デッドストックとしてスペースを邪魔するだけになってしまっている、といった事例もあるようです。

国土交通省国土地理院企画調査課長藤村

ESCAP(国連アジア太平洋経済社会委員会)のレポート(※)によれば、年間の災害被害額の54%はアジア太平洋で発生しており、日本様々な災害の種類で被害額の多い国として出てきます。好むと好まざるとに関わらず、世界の災害被害のかなりの割合は日本で起きています。そういった日本の災害の中で、地方公共団体の職員の方々最前線非常に過酷な勤務をされていると承知しています。そういった方々の行動を、国土地理院地理空間情報でいかにして支援していくか、というところを改善したいと思っています。

(※)Asia-Pacific Disaster Report 2019

https://www.unescap.org/publications/asia-pacific-disaster-report-2019

そしてそのための一つのアプローチとして、地理院地図のベクトルタイルを使用してもらう、ということを考えたいですね。

UPWARD株式会社代表取締役社長CEO金木竜介

はい。被災地の現場で復興のために働く方々って、僕らが普段ご支援している民間企業のフィールドセールスの方々と現場でやっている「活動記録を残すこと」はほぼ一緒なんですよね。そこに公共性緊急性がある、という違いだけで。 そこに、国が整備する災害関連の地図情報が災害復興活動にかんたんに使えるだけでもかなり価値があると思うんです。

もちろん有事の際だけに限らず、地域の空き家の管理公共施設の日常的なメンテナンスなど「地域住民へのサービスを行なっている方々」の“日常業務”を普段から支えたい。

大幅なIT投資が難しい地方自治体の方々現場の方々に、安価で最新のITサービスを、地域住民向けの活動の中で活用してもらうことが本当に重要だと思います。

(UPWARDは自治体向けソリューションとして、普段の業務の一部からアプリを使用し、有事の際はライセンス数を自由に拡張できるなど、公共料金のような“使いたいとき、使った分だけ支払うモデルを目指している。)

UPWARD株式会社代表取締役社長CEO金木竜介

失礼な言い方かもしれませんが、日本の中で、国土地理院が何をしているか、ということを知らない人ってたくさんいると思います。地図位置情報技術を扱っている僕らのような会社の中にもきっといる。でも毎年めちゃくちゃ費用をかけて地図基盤を更新していたり、日々現地調査を行なっていたりしている。

僕らのようなSaaSプロバイダーが、国土地理院が制作している「国の資産」を災害時の復興支援日常の地域住民サービス活用していく。「これは国土地理院のデータを利用しているんだよ」と言い続けて地道に事例化していくことで、納品文化では生まれない共創価値がどんどん広がっていくのだと思います。

国土交通省国土地理院企画調査課長藤村

そうですね。マルチセクター連携非常に重要ですが、日本政府の中だけで経験を積む中ではあまり実感がわかない世界だと思います。例えば、国土地理院の中には「自分たちで地図作成からアプリケーションまで完結したい」というカルチャーもあります。しかし、それだと国土地理院も、また他のプレイヤーも、継続的な事業として顧客が必要な時に必要なサービスを提供するということができない

ベクトルタイル地図が色々なITインフラへ飛んで行って、それぞれの場所で使われるようになっていってほしい。地理院地図のデータ部品として活用しながら、自治体で働いている人を支援する事例ができれば、日本での事例として世界でも紹介できる事例となると思います。事例として提示できれば、さらにグローバルに知恵を出し合ってユニバーサルデザイン化して、改善もされるしスケールもできる。そういったループを回せるととても良いなと感じます。

また、教育機関にも広げることができそうです。教育は次世代育成にもつながります。測量業界やその中にある国土地理院に興味を持っていただける優秀な学生が増えてくれたら、嬉しいです(笑)。

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おわりに - 今後の取り組みと「当たり前の綺麗ごと」の重要さ

UPWARD株式会社代表取締役社長CEO金木竜介

日本って、ITに関わっている人がこんなにたくさんいるのに、なぜこうしたイノベーションの分野では遅れをとっているのでしょうか?

良い情報作りこまれた情報をたくさん持っていても、なかなか「みんなが使えるように」といったプラットフォーマー的な発想は出てこないですよね。

国土交通省国土地理院企画調査課長藤村

多分、日本のカルチャーは、職人性が高いのではないでしょうか。プラットフォームは「仕切り」であると思うのですが、その仕切りの寡占が進むと、仕切りの中で「職人力が重視される世界になります。「仕切り」に対して、作り込まれたコンポーネント(構成要素)を作って差し込む、というのが日本のカルチャーが得意とする分野だと思います。

また、日本の人は、秘書性と言いますか、周りを見るのが得意、というしゃべりも聞きました。コミュニケーションが丁寧調整能力が高く、自然と任務以外のことも慮れる傾向があるのでしょうね。だからこそ、確立されたプラットフォームの中で必要なコンポーネントを作り込んでいく力があるのだと思います。

UPWARD株式会社代表取締役社長CEO金木竜介

日本人が得意な分野を活かしつつ、パートナーシップ海外とも繋がっていければ、というところですね。

ただ今の時代は特に、クラウドの普及市場のグローバル化を受け、これまで縦割りで分かれていたものを繋げなくてはやっていけない時代だと思うんです。

もしグルーバル視点での横断的な考え方国民性として得意でないとしたら、まずは国内同業で繋いでみる。産学官でパートナーシップを結ぶことで、共創価値2~5倍になる、ということをどんどんやっていかないといけないと考えています。


(Salesforce、UPWARD、boxを掛け合わせて行なった令和2年7月豪雨の被災地支援では、罹災証明書発行スピードの大幅な改善が見られ、優良事例として多くの自治体の参考となっている。)

国土交通省国土地理院企画調査課長藤村

UN-GGIM(※)という、毎年ニューヨークやバンコクで開催している専門家会議があります。

※「地球規模の地理空間情報管理に関する国連専門家委員会(United Nations Committee of Experts on Global Geospatial Information Management)」  

この専門家会議は、民間企業の方が参加できる会議体となっていて、セクターを超えて実際に地理空間情報を実践的に活用されている専門家同士で情報交換をする場です。コミュニティ・オブ・プラクティス(実践コミュニティ)として、“信頼“を通貨に、より良い情報を交換し合っています。

そういった専門家会議にUPWARD社さんのような日本を知る企業の方々に多くご参加いただいて、グローバルなコンテキストで活動する地理空間情報の専門家として繋がっていただくことができると素晴らしいと思います。例えば、地理院の地図データ×UPWARDでのフレームワークを提示して、日本人らしい作り込まれたソリューション発信し、フィードバックを得られれば良いな、と。

(※外部サイトにリンクします)

UPWARD株式会社代表取締役社長CEO金木竜介

ありがとうございます。今後、国土地理院をトリガーに、パートナーシップをどう取り組めるか、というSDGsを軸にした中長期的な話が出来れば良いなと思います。

国土交通省国土地理院企画調査課長藤村

そうですね。

これに関連して、海外の方はよく「綺麗ごと」をまず提唱してから、磨きこんでいます。

UPWARD株式会社代表取締役社長CEO金木竜介

綺麗ごと、たしかにそうですね。MicrosoftもSalesforceもすごく綺麗ごとを言うけど、そこに本質がある。だから言い続けることによって、世界観ロックされて、まわりが熱狂していく。

国土交通省国土地理院企画調査課長藤村

日本人にとって「そんなの、当たり前の綺麗ごとじゃん」という感覚でも、「当たり前の綺麗ごと」だからこそ、誰にも否定できない、つまり全員合意できる、強いコンセプトになります。

当たり前なことを、丁寧言葉にして、これをプライオリティにするんだ!!と言えた人がリーダーシップを取ります。

今日は、綺麗ごとを言ってくれる日本の会社の方と話せてとても良かったです。

UPWARD株式会社代表取締役社長CEO金木竜介

ありがとうございます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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