国土地理院「地理院地図」×UPWARDで叶える日本のレジリエンス向上ビジョン 国土地理院 は地図を作り続けて150年以上の歴史 がありますが、いままさに抱えている課題が、「地図を作る人と使う人のつながり 」をどのように確保するかということです。国土地理院では日々正確な地図 を作り、刊行 していますが、「具体的にどうやって使ってもらうか 」までは日々の業務で恒常的にはフォローできていません。 国土地理院は、街中にどんなお店がある 、といった情報 は持っていません。でも、どこにどういう斜面 があって、どういう災害リスク があって、という情報は持っています。そういった基盤的地理空間情報のプロバイダー として、「必要な時、必要としている人へ 」着実に地図を提供していきたいのですが、それを実現する方法 に悩んでいます。「地理院地図パートナーネットワーク 」という、受託開発者とツール提供者と国土地理院との情報交換の場 を立ち上げてはいるものの、国土地理院が伝えたいもの とユーザーが使いたいもの のギャップを埋める方法が不足しており、少し苦しんでいます。
(国土地理院が提供実験を行なっている『地理院地図』 では、国土地理院の保有する様々なデータをレイヤーで重ねて表現できる。)
SDGsアクションプラン2021 に、国土交通省のミッション として下記の項目が策定されています。 【地理空間情報によるパートナーシップの推進】 国連イニシアティブや国連専門家委員会、地方公共団体との連携や産学官連携を含む国内外のパートナーシップを通じて、防災など多分野での地理空間情報の利活用を推進する。
私自身、国土地理院の国際業務 にも関わりつつ、国内では地方公共団体との連携 を考える立場でもあります。SDGsを達成するためには国際協力 と国内実施 を一体 で考えることが有効ですが、それらの共通目標 を考えるには「海外の方にも伝わるようなシンプルなメッセージを考えてみる 」という切り口で考えるとうまく行くように思っています。 アメリカ では、地理空間情報に関わる政府機関 の多くは“命を守るため”の予算枠の中で活用 できているように見受けました。私たちも、消防 や警察 、地方公共団体の最前線の現場担当者 など、日本でオペレーションをやっている方々 への地理空間情報を通じた支援を強化 していくことはできないかと考えています。
国土地理院 という組織が、国民の命を守るための情報基盤 として在るためには、地理院地図のデジタルデータを利活用 するほかないかな、と僕は考えています。UI/UXの部分 については、僕らのような民間企業 に任せて、コンテンツプロバイダー として情報をクラウドで使用しやすい形で提供する 、という枠組みを推進してもらえれば、それだけでもグッと前に進む のではないでしょうか。 普段使い はGoogle Maps で、有事のときは地理院地図データに差し替える など、やはり、有事のときにパッと使ってもらえる ことが大事だと思うんです。今の時代、災害 や事故 の情報は一般のメディアよりもSNSの方が速かったり します。インターネットやアプリケーションを使って繋がっていくというアプローチ は必須です。
(2016年の熊本地震の際、熊本市長が連日Twitterを利用して市民への情報提供 を行なった。内容は被災状況や避難所の案内、ボランティアの募集など幅広く、不安定な状況下での市民の安全確保 に繋がり、有事の際にSNSを活用する動きは各所で広がっている。)
もちろんそういった有事の事態のためのBCPアプリ というものもあるにはありますが、日常的に使っていないものを有事の際に急に使えるようになるか というと、そんなことはありません。実際、被災を受けた地域 に物資としてノートパソコン を送っても、インフラが不備 であったり、そもそもパソコンを立ち上げる暇もない から、デッドストック としてスペースを邪魔 するだけになってしまっている、といった事例もあるようです。
ESCAP(国連アジア太平洋経済社会委員会)のレポート(※)によれば、年間の災害被害額の54%はアジア太平洋で発生 しており、日本 は様々な災害の種類で被害額の多い国 として出てきます。好むと好まざるとに関わらず、世界の災害被害のかなりの割合は日本で起きています 。そういった日本の災害の中で、地方公共団体の職員の方々 が最前線 で非常に過酷な勤務 をされていると承知しています。そういった方々の行動 を、国土地理院 の地理空間情報 でいかにして支援 していくか、というところを改善したいと思っています。 (※)Asia-Pacific Disaster Report 2019 https://www.unescap.org/publications/asia-pacific-disaster-report-2019 そしてそのための一つのアプローチとして、地理院地図のベクトルタイル を使用してもらう、ということを考えたいですね。
はい。被災地の現場で復興のために働く方々 って、僕らが普段ご支援している民間企業のフィールドセールスの方々 と現場でやっている「活動記録を残すこと 」はほぼ一緒 なんですよね。そこに公共性 や緊急性 がある、という違いだけで。 そこに、国が整備する災害関連の地図情報が災害復興活動にかんたんに使える だけでもかなり価値があると思うんです。 もちろん有事の際だけに限らず、地域の空き家の管理 や公共施設の日常的なメンテナンス など「地域住民へのサービスを行なっている方々 」の“日常業務 ”を普段から支えたい。 大幅なIT投資 が難しい地方自治体の方々 、現場の方々 に、安価で最新のITサービス を、地域住民向けの活動の中で活用 してもらうことが本当に重要だと思います。
(UPWARDは自治体向けソリューション として、普段の業務の一部 からアプリを使用し、有事の際はライセンス数を自由に拡張できる など、公共料金 のような“使いたいとき、使った分だけ ”支払うモデル を目指している。)
失礼な言い方かもしれませんが、日本 の中で、国土地理院が何をしているか 、ということを知らない人ってたくさんいる と思います。地図 や位置情報技術 を扱っている僕らのような会社 の中にもきっといる。でも毎年めちゃくちゃ費用をかけて地図基盤を更新 していたり、日々現地調査 を行なっていたりしている。 僕らのようなSaaSプロバイダー が、国土地理院 が制作している「国の資産 」を災害時の復興支援 や日常の地域住民サービス に活用 していく。「これは国土地理院のデータを利用しているんだよ 」と言い続けて地道に事例化 していくことで、納品文化では生まれない共創価値 がどんどん広がっていくのだと思います。
そうですね。マルチセクター連携 は非常に重要 ですが、日本政府 の中だけで経験を積む中ではあまり実感がわかない世界 だと思います。例えば、国土地理院 の中には「自分たちで地図作成からアプリケーションまで完結したい 」というカルチャーもあります。しかし、それだと国土地理院も、また他のプレイヤーも、継続的な事業として顧客が必要な時に必要なサービスを提供するということができない 。
ベクトルタイル地図 が色々なITインフラ へ飛んで行って、それぞれの場所で使われる ようになっていってほしい。地理院地図のデータ を部品 として活用しながら、自治体で働いている人を支援する事例 ができれば、日本での事例として世界でも紹介できる事例 となると思います。事例として提示できれば、さらにグローバルに知恵を出し合って 、ユニバーサルデザイン化 して、改善 もされるしスケール もできる。そういったループを回せる ととても良いなと感じます。 また、教育機関 にも広げることができそうです。教育は次世代育成にもつながります。測量業界 やその中にある国土地理院 に興味を持っていただける優秀な学生 が増えてくれたら、嬉しいです(笑)。