コロナ禍で高度化した営業機能と、既存の強みを掛け合わせる 金木 :吉本様がコンサルタントとしていろいろな企業の方とお話しされる中で、特にこの状況に危機感を持たれている経営層の方はどこの業種に多いですか?
吉本様 :電機、自動車、製薬など、日系の伝統的な企業 ですね。こうした企業の役員、経営層の方々は、会社のためにがむしゃらに働く企業戦士 として過ごしてきた方々も少なからずおられるので、現代の若手社員の“躍動感のなさ”を心配 しているように感じます。コロナ禍になる前からですが、更にそれが顕著になってきているようです。 例えば、新しい仕事のやり方を造る、新しい商品やサービスを作る、などのいい意味の“悪巧み・いたずら” を、社内で見かけなくなってきているようです。
金木 :なるほど。働き方改革にコロナ禍が重なって、自分たちの成功体験をそのままなぞらせる訳にもいかない状況 ですしね。
吉本様 :特に営業活動においては、これまでの勝ちパターンだった(と考えられてきた)対面コミュニケーションに過度に依存した営業 は難しく、この状況は継続すると考えられています。コロナ禍で訪問を控える傾向があったこともあり、オンライン面談 やマーケティングオートメーションの活用 など、デジタルシフトしていくのは大きな流れであり、これ自体は更に加速していくと考えます。
(ロボフィス株式会社、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ「withコロナ環境における、遠隔営業活動やオンライン会議ツールの利用」(2020年9月8日) によると、オンラインでの営業活動実施率は74.3% に昇っている)
吉本様 :ただ、デジタルで環境は激変したと言われても、私たちの1日は24時間 であり、そのうちに仕事に割ける時間も変わっていません。むしろ社会的な風潮・法制度等により短くなってきています 。これは当然ですが自社もクライアント、お客様も同じです。 この限られた時間の中で企業からクライアント・お客様に適切な営業コンテンツをコミュニケーションする為には、大きな方向性としてはデジタルシフトではあるのですが、その前段でお客様とのコミュニケーションをどの方法(オンライン/オフライン)で、何をコミュニケーションするか を改めて考えいく必要があります。
金木 :デジタルコミュニケーションも進化していますが、それでもオフラインとは全然情報量が違いますよね。オンラインでできるのは、情報共有まで だと僕らは考えています。顧客の真の課題 、表情 や雰囲気 の把握、信頼感 やロイヤルティ の醸成などは、オフラインでしか取れないのではないかと。 熾烈なデジタル化競争の時代 に入り、お客様の元に届くオンラインの情報量はすごく多いので、埋もれてしまう。いかに、オフライン戦略に持ち込むか が差別化につながると考えています。
吉本様 :お客様に対面して(オフラインで)会う時間は、限られてくるでしょう。そしてより特別なものになると考えられます。だからこそ企業は伝えるコンテンツをより高度化 し、営業担当にはそれを伝える・お客様の状況を把握する高度な技術 、加えて企業の姿勢を誠実に表現する人間力・センス が更に求められるようになる。 今後、この営業機能の高度化の流れを受けて、人数自体は減るものの、営業担当の選別 がいい意味で始まるのではないでしょうか。企業も優秀な営業担当を育成し、必要に応じて外部からの採用を積極的に進めるなどの営業組織・人材の高度化 をより積極的に進めていくものと予測しています。
金木 :そうですね。同じように、製品力という面からもその必要性はある かなと感じています。 Amazonで買い物するときは、機能 と値段 重視。店舗で購入するときには、他の要素 も入ってくる。オンライン化が進みすぎると、単純に日本製は海外製品に負ける。そういった面でも、差別化として、オフラインの顧客接点のデータ をしっかり企業として溜めて戦略を打ち出していく、というのはとても重要になると考えています。 そこで僕らは、2020年7月に「UPWARD AGENT」 という、位置情報をCRMにシームレスに連携するスマホアプリ をリリースしました。
金木 :「現場のラストワンマイルを革新する」 というのが、僕らのミッションです。ラストワンマイルの顧客接点の情報 をきちんと拾い、デジタライズ していくということ。そしてデジタライズしたものを、企業にとって価値のある情報に意味化 していくことです。 「UPWARD AGENT」は、オンラインでは入手しづらい、“オフラインのラストワンマイルのデジタル化”にフォーカスしたサービス でありたいと思います。
吉本様 :どこをどのようにDXしていくか、というテーマは、そもそもの「企業と消費者でどのようなコンテンツのコミュニケーションが行われるか?」「それはどのタイミングで、どのタッチポイントを経由して行われるか?」といった“コミュニケーションタッチポイントのDesign(総合的な設計)” があって初めて意味を成すものだと思います。30年以上前から続いてきた営業モデルは既に破綻をきたしています 。また営業も含めたタッチポイントのDesignも見直しは必須です。 高齢化などの日本の人口動態変化 、都市部集中 、日本語以外のコミュニケーションの割合の増加傾向 、また優秀な人材確保の難しさ 、コロナ禍を経て加速する非対面コミュニケーションへのシフト などを考慮すると、各地域に総花的に配置してきた営業拠点、営業担当、これを中心にしたタッチポイントについての見直し はほぼ全ての企業で検討されており、より加速していくものと思われます。そして、このタッチポイントDesignの中で、“新たに再定義された営業”にはより高度な機能が求められる流れ も加速するものと思われます。 そこに「UPWARD AGENT」のようなソリューション を当てはめていって、DXを実現する ということが非常に大事だと思います。 まさに、日本の多くの企業はこのDesignの力が足りない 。また、Designしたものを現場に実装するときに、怖がってしまう 。既存組織の軋轢 があったり、お客様が離れてしまう のではないかとか、競合他社が別のことをやっていたら どうしよう…などの恐怖 ですね。なので、営業フロント周りのDXは進みづらい。 ここを進めるためには、既存組織起点でタッチポイントをDesignするのではなく、消費者起点で、本調査も含めた環境変化を考慮してDesignすること が重要です。
新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけとしてあり、変えざるを得ない状況ができましたので、これが「UPWARD AGENT」のようなツールを使って、DXを加速させるラストチャンス だと思います。
金木 :まさに、今があらゆる変革の大きなチャンス ということですね。我々も、プロダクトを通じて、営業組織におけるお客様のコミュニケーションDesignを支援 していければと思います。 本日は貴重なお話、ありがとうございました。